第5章 避難

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数十分後、ようやく車は御殿場市を抜け、静岡県の東のはじっこにある町、小山町に入った。ここまで来ると、火砕流の被害は少しずつ少なくなり、うっすらと民家の屋根が顔を出すようになった。 山道を抜け、丹沢の山道に入った。そこまで、車内の会話は0だった。 さすがに、喉が渇く。ペットボトルのお茶は、とうに飲み干していた。車に積んであった蒸留水は、後コップ数杯で無くなる。 「喉、渇かないか?」 健一は心配そうに愛子に訊いた。自分は大丈夫だが、体力を消耗しきった愛子の方が心配だった。 「ううん。大丈夫よ。健一の方こそ大丈夫なの?」 元気の良さそうな笑顔を見せて、愛子は聞き返した。 「俺は大丈夫」 と、同じように笑顔で答えた。
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