第1章 前兆

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その時、ガタガタガタ……と室内が小さく揺れた。 「――余震ですね」 と、落ち着いた表情で長崎が言う。 震度3……いや、4ぐらいだろうか。もうこの程度の地震には慣れっこになっている。 「首相。気象庁長官よりお電話です」 収まってから暫くして、首相秘書官が電話を持ちながら言った。 「橋本だが」 『首相。直ぐに東海地震注意情報を……いや、警戒宣言を発令してください』 電話の主は気象庁長官、安藤隆一(あんどうりゅういち)だった。かなり緊迫した声だった。 「なんだ。いったいなにがあった」 『先程の地震は、駿河湾の海底が震源で、震源が深かったために震度は小さいのですが、マグニチュードは7クラスで、既に駿河湾沿岸には高さ1メートル前後の津波が襲っています』 安藤はそこまで一気に言うと、深呼吸をして、更に続けた。 『その海底地震の影響で、東京大震災で活動を刺激されたプレートに、更に圧力がかかり、いつ東海地震が発生してもおかしくありません。とにかく、急いで下さい!』 ガチャン、とそこで電話は切れた。それが本当なら、大変なことになる。
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