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この態度に青年の眉が少し動いた。しかしこのまま黙していたところで話が続く訳がないのは今の態度で証明されているので、青年は言われるままに名を名乗り始めた。
「そうだね、僕の名前はテノー。テノー・ズィクス・シュノーファルです」
「そう、私はマリア・ブルーティア」
自分のことを『マリア』と呼んだ女性はそこで始めて青年・テノーに顔を向けた。
紅い瞳が宝石のルビーのよう。テノーはその美しさに見惚れてしまい、暫く沈黙が訪れた。
「どうかしましたか?」
問い掛けるマリアだったが、その理由はもう判っていた。それは、これまで逢ってきた全ての男性と同じである。
彼女の一言でハタと我に返ったテノーは、どもりながらも会話を繋げようとした。
「え……? あ、いや……マリア(聖女)って言うんだ。素敵な名前だね」
「不適の間違いでしょ? それに、ありきたりな名前とも言える」
テノーの誉め言葉もたった二言で切って捨てる。再び暫しの沈黙が訪れた。まあ、今どき名前から攻めるのはイタイだろうとは思うが。
と、そこへ注文していたコーヒーが運ばれてきた。沈黙に耐えられなくなっていたテノーは、それを気まずそうに口に運んだ。
「それで、私に何か?」
「あ、そうだったね。キミってさ、もしかしなくても一人?」
「そうだけど、どうして?」
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