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「だってキミ、昨日からずっと一人だったじゃないか。昼食の時も、夕食の時も、その他どの時間も一人だったからね。普通ツレの人が居たら少しくらい一緒にいる時が有ってもいいと思うけど?」
マリアは感心して微笑を浮かべた。
「よく見てるわね。てことは昨日から狙ってたって事?」
「キミみたいな人を気にするなって事の方が、無理あると思うけど?」
この発言にはレストランに居た人たち全員が頷いた。ただし表面には出さず、心の中で、である。
「で、本題なんだけど、実はこの船の船長さんって僕の叔父に当たるんだ」
(ああ……やっぱりそっち目的なんだ……)
マリアは内心溜め息を吐いた。魂胆が丸見えである。彼女は大体の予想はしていたが、やはり彼も今まで出会ってきた(正確に言うなら言い寄ってきた)男どもと一緒だった。
「もしキミさえ良ければ、船内のいろんな場所を案内出来るんだけど、どうかな? 例えば立入禁止区域とか……」
今どき立入禁止区域に入れて喜ぶ女性がいるのだろうか? 船マニアならともかく。
「……それ、ナンパのつもり? だったら私、失礼するわ」
「あっ! ちょっと待って!」
さっさとその場を去ろうとするマリアをテノーは慌てて止めようとした。本心をいきなり看破されたからだ。
「けっこうカタイなあ、この人」
彼の心中を代弁すればこんなところである。
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