序章

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   女性の身体中からは、炎が産み出されていた。『炎のような何か』では決してない。正真正銘の『炎』である。    そしてその頭上には、まるで太陽のように燦然と輝く、大きな大きな、深紅の球体が一つ。アレが、本来なら今あるべき闇を剥ぎ取ったのだろう。    それは、魔法による産物だった。    ある世界では『神の御業』と崇められ、またある世界では『悪魔の所業』と忌み嫌われる超常の能力。   「う、う嘘だ! なんで……そんな……!?」    自分が今どんな顔をしているかすら判らない。やっと絞り出した声も、恐怖で震えてそれ以上繋ぐ事が出来なかった。    この世界では、魔法はそれ程特別な能力ではない。少し修行をすれば誰でも使えるようになる、極々一般的な能力である。では、何故男性はこんなにも怯えているのだろうか?    答えは単純だった。彼女が創り出したその『偽りの太陽』とその身に纏う紅蓮が、人間に許された許容の限界を(少なくともこの世界でのものを)遥かに逸脱していたからだ。    いや、それだけではない。そもそもこの世界では、魔法の軍事利用は『技術的に不可能』とされていたはずだった。現段階ではそうだ。    有り得ない。有り得ない。有り得ない。    同じ言葉が男性の思考を喰い尽くしていく。
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