一章

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   1    『エルフ・ヴェルト』という名の世界がある。    全部で十一の国で形成されるその世界の中で、『ヴァルカ』は小さいに入る国だ。その為、他国と比べて農産物などの生産業が乏しく、特に最近では、穀物の類をほとんどを輸入品に頼っていた。そんな何も無い国だが、たった一つだけ、宝石を始めとするあらゆる鉱石がよく採れる事で有名だった。  八月某日、旅客船『グーテ・ライゼ号』は、丁度その国に向かっていた。     「もうすぐヴァルカか……。一年ぶりだな……」  甲板に佇む女性は、水平線に浮かぶ小島を見つけるとそう呟いた。    女性の脳裏に今までの軌跡が浮かんだ。まず隣の大国の首都であるの情報を手にした後、近くの港まで丸一日汽車に揺らされ、さらにそこから間を置かずにこのヴァルカ行きの船に乗り、丸三日ほど波に揺らされ続けて来たのだ。本音を言ってしまえば、乗り物酔いで少し嘔吐感を催していた。 「本当に長かったなあ……」  柄にもなく感慨深くなり瞳を閉じた。    漂う潮の香り。不規則な、それでいて心地良い波の音が聴覚を刺激する。
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