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いつも私に物語を聞かせるような口調で、淡々と彼は語り始めました。
「見目で解ると思うが、それなりのお家柄の方だ。俺を拾ったのも、気紛れか、それとも善行が好きだっただけだろうと思っていた」
私を映す彼の瞳は、そこはかとなく悲しみを帯びていました。
私はこれに似たものを、かつて見た気がしたのですが、どうも思い出すことが出来ません。
彼は続けます。
「つい先日、あの方は子供を拾ってきた。子供というより、赤子だ。話すこともままならん」
彼は腕で赤子を抱く仕草をして見せました。
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