~ 壱 ~

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 ──ほほう、成る程。  では貴方は、彼のことを私に訊くために、わざわざこのような辺境までお越しになったと仰るのですか。  ──良いでしょう。  真実とは言い切れませんが、私の知っておることを、お聞かせ致しましょうか。  そうですね。先ずは出逢い、それから彼の人となり。其処から始めるとしますか。  では、暫しご静聴願います。  ──覚えておりますとも。  ええ、それはもう、ようくね。あれは確か、雪の季節の事だったと記憶しております。  臭いや色の無い、白の世界が始まり出すと同時でした。
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