~ 壱 ~

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 どうやら彼は孤児であったようです。  戦だか焼き討ちだかで、家も、両親も、故郷も、何もかもを失ったと聞いておりました。  可哀想だと思った事は、勿論あります。  ええ、それは同情というものだったと自覚しております。  彼は決して裕福な生活をしてはおりませんでしたが、ある方に拾われ、二人で生活をしていたようです。  彼も私も十代半ばで、まだ元服も済ませてはおらぬ年でしたから、一人で生きていくのは大変なものでした。  ですから彼にとって、その方の存在がとても大きなものだったという事は、私にも想像は出来ます。
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