~ 壱 ~

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 私も一人で暮らしていた身。父も母も兄弟もおりませんでした。  けれども家と財はありましたので、それなりの生活は送れていたわけです。  彼一人住まわすのは困難ではなさそうでしたので、私はその冬を彼と過ごすことに致しました。  私は尋ねてみました。 「何かあったのですか。あの方とは、住まないことになったのですか」  二、三度あの方を見たことが御座いましたが、私たちよりは幾分か、そうですね、十ほど年上のようでした。  身よりのない子供を一人、養えるのも当然といったような着物をお召しでした。
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