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―幸福―
桜並木を老犬と子猫が歩いていた。満開の桜が幻想的で美しい風景をかもしだしている。子猫のユキは顔を上げたままあぶなっかしい足取りで、隣にいる老犬のルードは慈愛に満ちた瞳を向けて見守っていた。
ユキは気づいていないのか、瞳を輝かせながら夢中で見続けている。
「ねぇ、ルード。私ね今すごく幸せなんだよ。ルードが側にいるし、帰る場所があるんだもん」
ユキはそれだけを言うと勢いよく駆け出した。
小さくなるユキの後ろ姿を見つめながら、ルードはユキの幸福を願うように桜を見上げた。
残りの時間をできるだけユキの為に使おうと散りゆく花びらに心の中で誓いを立てた。
ルードは愛しいユキのことを想いながらユキが走り去っていった方を見つめた。
小さくなっていくユキの後ろ姿を見つけ、走り出した。
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