Maria

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 ああ、今日はクリスマス。 私はポツリと呟いた。 外は真っ白な雪で覆われて、何もかもが白一色になった。 私は、そんな白色の景色に目を細め、培養液の中の彼女へ愛の言葉を投げかける。 もっとも、彼女には聞こえていないと思うけど。 10年前のちょうど今日、彼女は死んだ。 ……いや、殺された。 彼女の体はナイフでズタズタにされていた。 特に彼女の腹は、内臓が飛び出るくらいにズタズタだった。 しかし、唯一彼女の美しい顔だけは傷一つなかった。 私は、そんな彼女の姿を見て狂ったように泣いた。 ……いや、あの時狂ってしまったのかも知れない。 この10年間、私は彼女のためだけに生き続けてきたのだから。 私は、彼女の体から首を切り離し、特殊な培養液の中へと入れた。 そして、彼女を何とか生き返らせたくて、生命維持のチューブを何本も切り口に付けた。 今も彼女は、培養液の中で眠り続けている。 時折、彼女が息を吐く。しかし、彼女は目覚めない。 彼女の髪が海藻か何かのようにユラユラと揺れる。 彼女の青白い美しい顔と、金色の髪と、色とりどりのチューブが、何かの芸術のようにさえ思えてくる。 私がどんなに愛の言葉を囁いたって、彼女の目は閉じたまま。 今日は、クリスマスなんだ。 私は、もう一度呟いた。今日は神の子、イエス・キリストの誕生日。 約2100年前に、奇跡が起こった日。 そんな日に彼女が目を覚ましたら、どんなに素晴らしいだろう!! 私は、力なくガラスケースを叩くと、自傷気味に笑った。 無理なのは、わかっている。 今の科学では、これが精一杯。 だけど……出来る事ならもう一度、彼女の瞳が見たい。彼女の笑顔が……みたい。
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