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バイクに跨り発進したはいいがまだ悪霊(彼はノイズと言っていた)は追ってくる。
しばらく走っていれば彼はサイドミラーを見て少し顔を歪めた。
「あちゃー、まだ追ってくるのかよ。本当に皐ちゃんってノイズに好かれてるねぇ~」
「は、はぁ…」
そう言いながら彼は自分のウエストポーチから何かを丸い物を取り出してそれに付けられているボタンを押せば悪霊に向かって投げつけた。
その丸い物を目で追えば悪霊の前でいきなり爆発する。
悪霊たちのけたたましい悲鳴に耳をふさぎたかったが、生憎両手は彼の背中にしがみついているためそれはできない。
そのせいか悪霊は追って来なかったが、ふと下を見ればいつの間にかバイクは宙を走っている。
幽霊になるということは重力の概念も消えてしまうもので、不思議な気分だ。
しばらくして冷静に事を考えれば、ふつふつと疑問が浮かんでくる。
「あの…」
少し控えめにウサ耳の彼に声をかければ軽い調子で答えた。
「んー?あぁ、大丈夫。俺野郎は乗せない主義だからシートはいつも綺麗さ!」
いや、そうでなくて…
「そうそう、今から逝くところは黄泉の国って所で…黄泉って知ってる?」
やっと本題に入れるようだ。
「はい、死者が死後に逝くところですよね?」
「うん、まあそんな所。本当なら49日間俺同伴で自由にしていいんだけど、今日がその49日目だから皐ちゃんには悪いけど、真っ直ぐ黄泉へ逝くね。」
「はぁ…」
まだ今ひとつ状況が掴めてない中、いつの間にかバイクは止まっていた。
「ようこそ、黄泉の国へ…って言ってもまだ入り口だけどね。」
そう言って彼は苦笑した。
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