第二章【―mosquito―それは非日常の訪れを告げる】

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『おい、お前』 そこは終わったはずだろ。 『一話で終わらせる気かよ?』 「うるせぇな、朝っぱらから。アンタ死んだんじゃなかったのかよ」 俺の枕元では、ブーンブーンと昨日のアイツが飛び回っている。 『オレは打たれ強いんだ』 「平手一発で即死するヤツが言うな」 『なんだと!? オレはそんなんじゃ――』 「なら俺の手のひら乗ってみるか?」 そのまま握り潰せるぞ? と目で伝えてみる。 『遠慮しときます』 俺の圧勝だ。ザマーみろ。 『昨日はマジで死ぬかと思ったぜ……ったく親の顔が見てみたいよ』 見た瞬間にお前は叩き潰されるけどな。 『いや、確かにいきなり現れたオレも悪いよ?』 いや、全てお前が悪いだろ。てか、さも当たり前のようにしゃべるな。 『けどよぉ、なにも殺そうとするこたぁねぇだろ』 「害虫駆除は人間の基本だ。蚊をみつけたらアー○ジェット。普通の反応だろ」 『ななななんてヤツだ……近頃の若者はなに考えてんだよ』 「あのさぁ、しゃべるなよ。叩き潰されたいのか?」 『……さっきから態度悪いぞ』 いやいや、なにソレ? 『せっかく起こしてやったのによ』 誰が頼んだ? 害虫に起こしてくれと、いつ頼んだよ? 『学校遅れるんじゃね?』 「ああ、面倒だから今日は休み」 『おいおい勝手に決めていいのかよ。だから蚊に対する態度がなってないんだよ』 俺は、枕元に置いてあった赤いヤツを手に取った。 『な、なにする気だ』 「今度こそ地獄に送ってやる」 『や、やめてくれ。頼む! こう見えてもオレは役に立つんだ』 「ほーう。ただの蚊が人間様の血を吸う以外になにをしてくれるんだ?」 『よくぞ聞いてくれた。我が主よ』 いつからお前の主になったんだよ。 『まず、オレたち蚊は血を吸った人間の性格や考えていること、体型や足のサイズまでなんでも分かる』 「それはすごいな」 『いや、本気にされると複雑だ』 うん、殺そう。だって害虫だし、罰は当たんねぇだろ。 『冗談だ! 足のサイズまではわかんねぇけど』 俺がアース○ェットを構えると、蚊の命乞いはエスカレートしていった。 『頼むよぉ。助けてくれよぉ。血は1日四食までにするからぁ。飛ぶ時もなるべく音たてないからさぁ。頼むよぉ、土下座してもいいからぁ』 蚊がどうやって土下座するんだ? 誰か知ってるなら教えてくれ。
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