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『おい、お前』
そこは終わったはずだろ。
『一話で終わらせる気かよ?』
「うるせぇな、朝っぱらから。アンタ死んだんじゃなかったのかよ」
俺の枕元では、ブーンブーンと昨日のアイツが飛び回っている。
『オレは打たれ強いんだ』
「平手一発で即死するヤツが言うな」
『なんだと!? オレはそんなんじゃ――』
「なら俺の手のひら乗ってみるか?」
そのまま握り潰せるぞ? と目で伝えてみる。
『遠慮しときます』
俺の圧勝だ。ザマーみろ。
『昨日はマジで死ぬかと思ったぜ……ったく親の顔が見てみたいよ』
見た瞬間にお前は叩き潰されるけどな。
『いや、確かにいきなり現れたオレも悪いよ?』
いや、全てお前が悪いだろ。てか、さも当たり前のようにしゃべるな。
『けどよぉ、なにも殺そうとするこたぁねぇだろ』
「害虫駆除は人間の基本だ。蚊をみつけたらアー○ジェット。普通の反応だろ」
『ななななんてヤツだ……近頃の若者はなに考えてんだよ』
「あのさぁ、しゃべるなよ。叩き潰されたいのか?」
『……さっきから態度悪いぞ』
いやいや、なにソレ?
『せっかく起こしてやったのによ』
誰が頼んだ? 害虫に起こしてくれと、いつ頼んだよ?
『学校遅れるんじゃね?』
「ああ、面倒だから今日は休み」
『おいおい勝手に決めていいのかよ。だから蚊に対する態度がなってないんだよ』
俺は、枕元に置いてあった赤いヤツを手に取った。
『な、なにする気だ』
「今度こそ地獄に送ってやる」
『や、やめてくれ。頼む! こう見えてもオレは役に立つんだ』
「ほーう。ただの蚊が人間様の血を吸う以外になにをしてくれるんだ?」
『よくぞ聞いてくれた。我が主よ』
いつからお前の主になったんだよ。
『まず、オレたち蚊は血を吸った人間の性格や考えていること、体型や足のサイズまでなんでも分かる』
「それはすごいな」
『いや、本気にされると複雑だ』
うん、殺そう。だって害虫だし、罰は当たんねぇだろ。
『冗談だ! 足のサイズまではわかんねぇけど』
俺がアース○ェットを構えると、蚊の命乞いはエスカレートしていった。
『頼むよぉ。助けてくれよぉ。血は1日四食までにするからぁ。飛ぶ時もなるべく音たてないからさぁ。頼むよぉ、土下座してもいいからぁ』
蚊がどうやって土下座するんだ? 誰か知ってるなら教えてくれ。
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