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それにしてもよくしゃべる蚊だな。人間よりよくしゃべるんじゃないか?
『なぁ、頼むよ』
しつこいヤツだな。……いや、だがこの蚊の能力はそれなりに使えるな。
『聞いてますかー。無視ですかー』
上手くやれば、つまらん日常を楽しい非日常に変えられるかもしれない。
『聞いてんのかー。なぁってば』
「うるせぇな! わかったから勝手にしろ」
『わーい。ま、仲良くやろうぜ』
いい性格してるな。蚊のクセに。
「ああ。でも、なんて呼べばいいんだ?」
『オレのことか? うーん……』
蚊は、俺の頭の周囲を飛び回りながら考えているようだ。
ウゼぇ。
かなりウゼぇ。
ハンパなくウゼぇ。
しばらくすると、蚊は目の前で止まった。答えが見つかったのだろうか?
『タカシってのはどうよ?』
予想外の返答キター。普通、モスオ(モスキートだから)とか、モスキー(重ねて言うがモスキートだから)とかだろう。
何故にタカシ? お前は人間様をなんだと思ってんだ?
『……タカオもいいな』
いやいやいや……なにタカオって? 人間様を侮辱するのもたいがいにしてくれ。
「あのさ、モスキーとかでいいだろう?」
『おいおい……やめてくれよ。なんでそんな、いかにもモスキートです! みたいな名前なんだよ』
モスキートだろお前は。人間様の血を吸う立派なモスキートだろ。
「いや、お前モスキートだから。ただの蚊だから」
『……ひどいよ』
いや、ひどくないだろ。
『ユキオって呼んでくれ』
「………はぁ?」
『本名ユキオだから』
立派な本名だなおい。てか本名あるならさっきのタカシやタカオはなんだったんだよ。
「じゃあユキオ。俺のことは祐様と呼べ」
こうして、俺の非日常っぽい生活は幕を開けることとなった。
この後、ユキオの能力を試すため学校に行くことになったんだが……まぁ、それは次回のお話。
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