第二章【―mosquito―それは非日常の訪れを告げる】

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それにしてもよくしゃべる蚊だな。人間よりよくしゃべるんじゃないか? 『なぁ、頼むよ』 しつこいヤツだな。……いや、だがこの蚊の能力はそれなりに使えるな。 『聞いてますかー。無視ですかー』 上手くやれば、つまらん日常を楽しい非日常に変えられるかもしれない。 『聞いてんのかー。なぁってば』 「うるせぇな! わかったから勝手にしろ」 『わーい。ま、仲良くやろうぜ』 いい性格してるな。蚊のクセに。 「ああ。でも、なんて呼べばいいんだ?」 『オレのことか? うーん……』 蚊は、俺の頭の周囲を飛び回りながら考えているようだ。 ウゼぇ。 かなりウゼぇ。 ハンパなくウゼぇ。 しばらくすると、蚊は目の前で止まった。答えが見つかったのだろうか? 『タカシってのはどうよ?』 予想外の返答キター。普通、モスオ(モスキートだから)とか、モスキー(重ねて言うがモスキートだから)とかだろう。 何故にタカシ? お前は人間様をなんだと思ってんだ? 『……タカオもいいな』 いやいやいや……なにタカオって? 人間様を侮辱するのもたいがいにしてくれ。 「あのさ、モスキーとかでいいだろう?」 『おいおい……やめてくれよ。なんでそんな、いかにもモスキートです! みたいな名前なんだよ』 モスキートだろお前は。人間様の血を吸う立派なモスキートだろ。 「いや、お前モスキートだから。ただの蚊だから」 『……ひどいよ』 いや、ひどくないだろ。 『ユキオって呼んでくれ』 「………はぁ?」 『本名ユキオだから』 立派な本名だなおい。てか本名あるならさっきのタカシやタカオはなんだったんだよ。 「じゃあユキオ。俺のことは祐様と呼べ」 こうして、俺の非日常っぽい生活は幕を開けることとなった。 この後、ユキオの能力を試すため学校に行くことになったんだが……まぁ、それは次回のお話。
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