『プロローグ』

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『賞金総額は【2億】。 これで全て終了です。おめでとうございます』 テーブルの傍らで佇む男は、黙ったまま宙を見つめている……。 彼らがこの【館】に着いた時、そこは非常に賑やかで喧騒に満ち溢れた場所だった。 だが、 今はもうこの男一人を除いて他のプレイヤーは誰もこの場にいない。 男は元々寡黙な方では無かったが、今となっては【終了】と聞いても喜べないほど精神的、肉体的双方において疲れきっていた。 『さぁ、お受け取り下さい』 銀色の仮面を被った男は、そう言ってテーブルに重厚そうに輝くアタッシュケースを二つ几帳面に並べる。 それに見向きもせず優勝者と言われる男は、小さい声で呟いた。 『あいつは……、対戦相手の男はどうなった? ここまで来ても扱いは同じなのか?』 銀の仮面は即答した。まるで、予めそう問われる事を知っていたかの様に……。 『貴方が知る必要はありません。 そして紛れも無く勝者です。 今回のプレイヤーの中で、最も冷静な判断力と頭脳を持った方。 ゲームは終わりました。 結局貴方一人しか残らなかったですね』 微量の軋み音をたて、後方に有る扉が開く。そこには二人の黒い仮面が待っていた。 そのうちの一人の仮面が彼を誘導する。 残されたもう一人の仮面の男は銀の仮面の傍へ歩いて行った。 その時…… 扉に向かい歩く彼の遥か後方で、小さな悲鳴が幾度か聞こえたが 男が振り向く事は無かった。 『しかし……今回のゲーム……優秀な奴が少なかった。我らに関係は無いが興を削がれたな』 『優勝者の金額で分かります。申し訳ございません』 『まぁ、安く済むに越した事はない。また次も有る事だ』 銀仮面は、そう言って館の奥へと消えて行く……。 一人それを見送った黒い仮面が、すぐに優勝者の後を追った。 命令を受けずとも行う定例儀式。 それは今回も変わる事は無い……。
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