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『いらっしゃいませ!』
『だからぁ!まだ入金確認取れないんですよ!』
自動ドアが開く度に奏でられるどこにでもある単純なメロディ音。
数分おきに鳴り響くカウンターに配置された電話。
それぞれに対応していく聞き慣れた従業員達の声。
いつもと変わらない、まるで綺麗な真っさらの紙にスタンプで押していくような日々。
この日もそんな一日
の、はずだった。
正確には七名いる従業員の中で、一際鋭い視線を持つ男
【神崎】
は、いつも座っている一番端の席にいた。接客カウンターは全部で八席有り、中は十分に広い。
そして透き通る程に白い壁紙で囲まれた空間。
ここは【神崎】が勤める、業界では中規模であろう金融会社。
ふと何気なく壁に掛かる時計を見る。もう僅かに昼を回っていた。
『なぁ、【神崎】』
不意に彼より後ろの席に座る男が話しかける。
声をかけた男は、【神崎】より一つ年上でこの支店の店長であり、名前を【鮎川】といった。
【神崎】はゆっくり席を立ち、【鮎川】のいる店長席まで足を運んだ。
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