開始

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 翌日、紳士は約束通りやって来た。  そして男に礼を言い、ケースと引き換えにボタンを回収した。  紳士が会釈して去ろうとしたとき、男は紳士を呼び止め、尋ねた。 「本当に……人が死んだのか?」  すると紳士は答えた。 「はい、たしかに昨晩どこか遠い所であなたの知らない人が死にました」  男は尋ねた。 「そいつは……どんな罪を犯したんだ?」 「自身の欲望のために他人の尊い命を奪いました。 あまりにも身勝手な、命でしか償えないような罪を犯しました」 「……最後に……もう一つだけ聞いていいか?」 「はい、何でしょう」 「……その箱を……これからどうするんだ……?」    紳士は口角を吊り上げて答えた。 「どこか遠い所の、あなたを知らない人のもとへ届けます」
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