12人が本棚に入れています
本棚に追加
開始
ある男の所に見知らぬ紳士がやって来た。
右手には5cmほどの箱を、左手にはジュラルミンケースを持っていた。
紳士は目深にシルクハットを被っていたので、男には顔がよく見えなかった。
その箱は、押しボタンがついている以外に特に変わったところは無かった。
紳士は穏やかな口調で言った。
「あなたがこのボタンを押すと、どこか遠い場所であなたの知らない人が死にます。
その人はある罪を犯しました。命でしか償えないような罪を。
しかし、とある理由で私にはこのボタンが押せません」
男は疑問に思いながら尋ねた。
「……で、俺にボタンを押してほしいって言うのか?
悪いけど、そんな冗談につきあってる暇は……」
ドサッ
「ボタンを押して頂けましたら100万ドルを現金で差し上げましょう」
そう言いながら、紳士は紙幣のぎっしり詰まったジュラルミンケースを見せた。
男が戸惑うと、紳士はケースの蓋を閉じて言った。
「3日後に箱を取りに伺いますので、それまでに押されるか押されないかを決めてください」
そう言い残して紳士は去って行った。
最初のコメントを投稿しよう!