距離

9/30
前へ
/169ページ
次へ
由梨は黙って俯いたままだった。 …おれに質問したのに…自分は言わねぇのかよ。 短気なおれは少しムッとしたが、 由梨の顔を見て一気に その気持ちがおさまった。 ―…泣いてる…? 「由梨…?」 おれが声をかけると由梨は泣きながら言った。 「…ごめ…な…さい…今日…かえ…て…」 由梨の声は途切れ途切れだったけど なにを言ってるのか分かった。 ―…『ごめんなさい 今日は帰って』…。 「分かった…明日も来るから」 おれは そう言うと、ゆっくり部屋を出た。 ―…相原家を出て、 おれは外から由梨の部屋の窓を見つめた。 …カーテンが閉めっぱなしの部屋―…。 …由梨がこのカーテンを開ける日って… いつなんだよ…。 …おれは本当に由梨を…助けられるのか? ―…相原家に来た、本来の目的は 『由梨を学校に連れてくるため』…。 でも、いつの間にか おれ自身の目的が 『由梨を 助けるため』 になっていた…。
/169ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1456人が本棚に入れています
本棚に追加