第一章 逃亡

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お互いにまずいことを聞きあってしまったため二人は必死に話題を変えようと頭を働かせたが、なかなか良い案が浮かんでこなかった。 その時、風太の目にガスボンベとオイル缶が飛び込んできた。 最初は何気なくそれを見ただけだったが、突然ひらめいた考えが頭いっぱいに広がった。 「そうだ!」 月姫はその声にびっくりして思わず飛び上がってしまった。 「ど・どうしたの?急に」 それに答えず風太はガスボンベ三本を近くの棚に置いてあったガムテープでオイル缶にくくりつけた。 そこにきて、月姫は風太が即席の爆弾を作っていることに気がついた。 ところが、くくりつけたところで風太の手が止まった。 「どうしたの?」 「点火装置をどうすればいいか考えてなかった」 風太は肝心の点火装置のことを考えないまま作っていたことに、月姫はあきれてしまった。 「肝心な部分が考えてないじゃだめじゃない」 「面目ないです・・・」 風太と月姫は点火装置に何を使うか必死に考えた。 しかし、なかなかいい考えは浮かばず時間ばかり過ぎて行った。 一時間ほど過ぎたところで、月姫からある案が出た。 「ねぇ、ここって花火売ってる?」 「季節関係なしに売ってますよ」 その言葉に月姫は疑問に思った。 「季節関係なしに?なんで?」 「ここの主人、花火が大好きで日曜の夜なんか一人で花火をやって盛り上がってるほどで・・・」 「じゃあここ2B弾ある?」 「もちろん売って・・・あ!」 そこで風太は月姫の考えていることがわかった。 2B弾とは、本体の下部に付いている着火火薬の部分をマッチの箱で擦って着火させた後、約十秒の間を持って爆発する手榴弾に似た細長い花火のことである。二人はかたっぱしから箱を開けて中身を確認していった。半分近く開けたところで風太が目当ての物を見つけた。 風太はオイル缶のキャップを外すと、別の箱に入っていた薄手のタオルを引き裂いたのを巻きつけることで太さを増させた2B弾を無理やりオイル缶に差し込んで固定し、さらに缶の口の部分にビニールテープを巻いて中からオイルが漏れないようにした。 「出来た!」 「一個じゃ足りないからもっと作ろうよ!」 二人は手分けして爆弾を作り始めた。
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