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ひっそりとした裏路地を走っている二人の男女がいた。
一人は高校生くらいのまだ幼さの残る顔立ちをした若い青年、もう一人は同い年か少し年上ぐらいの女性であった。
二人は息もとぎれとぎれになりながらも必死になって路地を走っていた。
二人が路地を走っているのは、二人を追いかけてくるものから逃げているためである。
その者はうめき声をあげながら二人を追いかけていた。
もし、ここに第三者がいてその追いかけているものを見たら迷わずこう叫んでしまうだろう「ゾンビ」と・・・
二人は必死に走っていた。
「ハァっ・・・ハァハァ・・・がんばれ!」
走っている二人の内の青年のほうが女性に向かって叫んだ。
「私は・・・まだ、大丈夫・・・」
女性はとぎれとぎれになりながらも返事を返した。
二人を追いかけてくる者は、最初は一人だった。
しかし、逃げるうちにその数は一人二人と増えていき、今では数十人にまで膨れ上がっていた。
狭く入り組んだ路地にいる数十人は、追いかけられている者にとっては数百人もの数に追いかけられているような錯覚を起こしてしまう。しばらく走っていると、二人の前に突如一つのドアが現れた。二人は迷わずドアノブを捻ってドアを開けて中に入ると鍵をかけた。
さらに二人はそばにあった机やら椅子やらを積み立てて即席のバリケードを作った。
暫くして、追いついてきた者たちがドアを叩くが、幸いにもドア自体が非常に堅固な作りになっていたためビクともしなかった。
二人は暫く呆然としていたが、疲れが一気に出たのか二人同時に床に座って息を整え始めた。
「助かったの?」
女性がおもむろに問いかけてきた。
「多分・・・」
青年はあいまいな答えを返した。
またしばらく無言が続き、聞こえてくるのはドアを叩く音と二人の息遣いのみだった。
暫くして気持に余裕ができたところでお互いのことを紹介することになった。
「あ・・・自己紹介がまだだったわね。私は雪里月姫、粉雪の雪に郷里の里に月と姫と書いてユキザトゲッキ。よろしく」
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