同心っぽくない同心

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愁が外に連れ出されると、そこには悲惨な光景が広がっていた。 必要最低限の村人を除き、残りを侍たちが惨殺していたのである。 もちろん老若男女問わず。 愁の目が瞳孔まで大きく開いた。 「1人残っていました。子供です。」 「子供か、用はない斬れ。」 愁を連れ出した侍が刀を抜く。 死ぬ―愁の顔は一気に強張った。 普通の人間なら命乞いでもしているのだが、愁は考えごとをしていた。 「斬られる…。 死ぬ…。 嫌だ、嫌だ…。 なら…斬られる前に…」 侍の刀が振り下ろされる。 愁の指が自然に刀のこいぐちを切る。 「斬られる前に斬る!」
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