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しばらくして少年は水を飲もうと顔を川面にうずめた。
生きている…口の中が潤うことで少年は生きていることを実感した。
だが素直に喜べなかった、笑顔を作れなかった。
水は得られても血は止まらない。
いずれ死ぬ…それだけが頭の中で交錯した。
少年は右手に握った刀を見た。
助けてくれる者がいなくなった彼の唯一信頼できる相棒だ。
ずっと握りしめていたのか、持ち手は血でにじんでいた。
少年はその刀をもう一度強く握った、弱気な自分を振り払うように。
まだだ…立つんだ…だが体は動かない。
一週間近く何も口に入れていない少年の命は風前の灯火だった。
死にたくない…
「…なら、ついて来るかい?」
?誰だ?
少年が見上げると、そこには長い背丈の男が立っていた。
足があることから、黄泉の案内人ではなさそうだ。
意識が薄れていたため顔ははっきりしない。
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