プロローグ

3/4
前へ
/189ページ
次へ
しばらくして少年は水を飲もうと顔を川面にうずめた。 生きている…口の中が潤うことで少年は生きていることを実感した。 だが素直に喜べなかった、笑顔を作れなかった。 水は得られても血は止まらない。 いずれ死ぬ…それだけが頭の中で交錯した。 少年は右手に握った刀を見た。 助けてくれる者がいなくなった彼の唯一信頼できる相棒だ。 ずっと握りしめていたのか、持ち手は血でにじんでいた。 少年はその刀をもう一度強く握った、弱気な自分を振り払うように。 まだだ…立つんだ…だが体は動かない。 一週間近く何も口に入れていない少年の命は風前の灯火だった。 死にたくない… 「…なら、ついて来るかい?」 ?誰だ? 少年が見上げると、そこには長い背丈の男が立っていた。 足があることから、黄泉の案内人ではなさそうだ。 意識が薄れていたため顔ははっきりしない。
/189ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加