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番外編・前姫
…………
ザーー
「前姫!!」
ひたすらに降る雨は体温を奪ってゆく。
「ちくしょう!!死ぬな!!前姫ー!!」
叫ぶ声に反応できない。
名前を呼ぶその少年の服は…自分の血であかく染まっていた………………
……「…前姫!前姫!」
気がつくと目の前にいたのは涼だった。
「ああ、どうした?」
「どうしたじゃないよ。食べ終わったのにずっとぼけっとしたままフォークを上下に動かしてるんだもん。どうかしたの?B級映画並みに怖いよ?」
時計を見ると、時刻は8時50分になっていた。
「心配かけて悪かったな。大丈夫だ」
なんとか笑顔を作ってみる。
「疲れてるの?だったら早く寝なよ?」
ドクン!ドクン!
顔をのぞき込んでくる涼に心臓が強く脈打つのを感じた。
「ああ、ありがとう、そうするよ」
それでも一応動揺せずに反応した。
動揺するのは天下の前姫には似合わないのだ。
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