暗雲

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ダークスーツを着崩し右手に持っていた銃を顔の横まで上げて首を傾げこの状況を楽しんでいるような笑みを浮かべながら相手は大下見下ろしていた。 どうやら大下はその銃で殴られたらしいがかなり強い衝撃だった。    ―こいつ、やばい― 大下は瞬間的に悟りふらつきながらも自分の銃を抜き相手にむかって構えるがそれより先に右肩に痛みが走る。 「俺が誰かなんて関係ないよ。…貴方は大下さん?」 男はサイレンサー付きの銃口から上る煙り越し大下の顔を伺うと大下の白いスーツが赤く滲み、右手に血が伝っているのがわかった。 「タレコミの電話かけたの俺なんですが…取引なんてありませんよ。大下さん」 「…まんまとはめられたってわけか…。つまらない手ぇつかいやがって…っ。せっかくのスーツが…台なしじゃねぇか。弁償、してくれんだろうなぁ。スーツ代は…経費じゃ落ちねぇんだぞ!」 血の流れる右肩を押さえ危機を感じながらも苦しそうに笑みを浮かべ冗談なのか真剣なのか緊迫した空気に合わない言葉を男に向かって叫ぶ。 「あはは、おもしろい人ですね。ご名答ですよ。でも、そのつまらない手に釣られたのは大下さんでしょ?…まぁ、来たのが貴方の相棒の鷹山さんじゃなかったのは予想外でしたが…貴方にも消えてもらうつもりだったので…いいでしょう」 銃を構えたまま肩を竦めると男は大下の腹部に蹴りをいれた。
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