転校生

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「そこの二人、もうすぐホームルー…………あーーー!」 「神流、煩い」 「あの人達だよ志輝、私を助けてくれたの~」 男子と話していた先生は、神流達に気付くと(あの声量で気付かない筈は無いのだが)二人を呼んだ。 「あら花水木さん、芒山さん、調度いい所に来たわねって………」 「あのっ、朝は助けて下さって、ありがとうございましたっ」 「ん、別に~」 「あいつら邪魔だったから」 二人はどう見ても違う学校の生徒。 だが、自分達の担任・浜崎桔梗(ハマサキ・キキョウ)はそれを当たり前の様に見ている。 「あの、先生。今更ですけど、そのお二方は何故この学校に?」 「あ、そうそう。転校生なの」 「「はぃ?」」 浜崎は、昨日言ったでしょと言う。 「二人は、この恭賀中学校に転校してきたの」 「「ぇえーーっ!」」 「ちなみに、私達のクラスだから」 志輝と神流が、今同時に思った事。 ―――世界って、狭い ‡‡‡‡‡‡ 「實川哉(ジツカワ・サイ)ってんだ。気軽に話し掛けてくれよ」 茶髪のクォーターはそう自己紹介した。 名前からは判らないが、ドイツと日本のクォーターハーフらしい。 そしてもう一人。 黒髪の男子は、名乗った時点でざわめきを呼んだ。 「烏哭耀魔(ウコク・ヨウマ)です。よろしく」 『烏哭』。 その名を知らぬ人間など、赤ん坊位とまで言われる程の有名人。 何故その苗字を名乗る人間が今此処にいるのか。 直ぐに疑問が持ち上がった。 中心ににいる耀魔はすごく居心地が悪かった。 隣にいる哉は、眼鏡の向こうにある耀魔の表情が険しい事に気付いた。 「先生!耀魔君の苗字は本名ですか!?」 ある女子がそう言った事で、教室は一気に騒がしくなる。 浜崎もどうしたらよいのか判らない。 彼女も半信半疑だからだ。 そこで哉がいらついた顔で言う。 「本名だよ、仮にも幼なじみだしな」 かなりドスの利いた哉の声に、場が静まり返る。 気を取り直した浜崎が、強引にホームルームを終わらせた。 「ちっ、ちなみに、烏哭君の席は花水木さんの隣、實川君の席は芒山さんの隣です!」 そう言い残すと浜崎は出て行った。
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