† Doll †

5/9
前へ
/110ページ
次へ
  「しかし王女。よく考えてごらん下さい。もし、隣国まで王女が出向いたとしますでしょう?それを――……。王女を隣国の兵が、黙って見過ごす訳は無いのですよ」 面を被った召し使いは、柔らかく丁寧な物腰で、王女に説明をする。 現在この国は、隣の国と良くない関係にある。 今、隣国で銃を発砲したら、事件なんかでは収まらず、あっという間に戦争に発展してしまうだろう。 つまり、そういう関係なのだ。 「知らん!私は隣町まで行きたいんだっ!」 子供の我が儘のような我が儘。 今年で十六になると言うのに、王女の我が儘は尽きる事を知らない。 「王女。では貴女は、部屋に入って来たネズミを野放しになさるのですか?」 「ネズミは殺すに決まっている」 「つまりそういう事です」 王女はふん、と鼻を鳴らし、黙り込んだ。  
/110ページ

最初のコメントを投稿しよう!

572人が本棚に入れています
本棚に追加