11人が本棚に入れています
本棚に追加
ひたすらに、通路を駆け抜けていた。
獣の様に荒い息を上げ。
心は死への恐怖を常に訴えていた。
ろくに照明が無いため、薄暗くなっている道をずっと進んでいく。
コンクリートを裸足で駆けている為、走る度に肉が擦れ、血が滲んでいた。
だが。
時間は無い。
痛みで躊躇している場合ではない。
確か……自分を含め20人だったか。そして制限は12時間。
この広大な地下施設の中を駆け巡り、目的を果たすには、この二つの要素は大きすぎる足枷であった。
ふと目の前に通路の出口が見える。
歩を緩め、足音を消してその出口へ近づいていく。
呼吸を可能な限り殺す。限界まで抑えた息でさえ、今の状況ではうるさく感じる。
できるだけ壁に寄り、身を低くして素早く出口へと近づく。
……居る。
人の気配。
極限状態に置かれた自分の感覚は冴え渡り、壁の向こうの気配を察知していた。
眼を閉じる。
集中した。鋭敏になった感覚を、更に研ぎ澄ませる。
思考は要らない。考える暇さえあれば動かなければならない。
躊躇はしない。その一瞬でさえ死に繋がる。
獣の様に。悪魔の様に。
そして――部屋へと躍り出た。
最初のコメントを投稿しよう!