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中央に走る幾つかの柱。
その横に筋肉で身を固めた、屈強な男が居る。
私はその男に向かって全力疾走をした。
相手は自分に気付き、こちらを振り向き、手を差し出す。
その手には――オートマチックの拳銃が。
舌打ちをする。
死の気配にピリピリと毛が逆立つ。
前へ向かう自分を、無理矢理横へと向かわせ、跳躍する。
無理な力がかかる。身体が、きしむ。
炸裂音。
自分の居た場所を弾丸が通り抜ける。
鈍い金属音が後方で響いた。
柱の影を通り、拳銃から身を隠す。
……こちらの武装はハンティングナイフと、スローイングダガーのみ。
銃を相手にするには、不利すぎる。
だが、これで殺すしかない。
殺すか。殺されるか。
その二択しかここでは許されない。
ダガーを1本手に取った。
柱の影を通り過ぎ、自分の姿を再び相手にさらす。
男が拳銃をこちらに向ける途中。
その間。下からすくい上げるようにダガーを投擲する。
手首に刃が突き刺さり、男は拳銃を地面に落とす。
隙が出来た。
腰に差した鞘からナイフを抜き、飛び込む。
男もナイフを構えていた。
重厚な刃を持つサバイバルナイフ。
至近距離……数m。
その間を一気に詰める。
男はナイフを突き出す。
直線の、最短の軌道で刃が自分の命を抉ろうと迫る。
足を振り上げる。
極度に打ち絞り、楕円を描く様な軌道で蹴りを放つ。
ブーツに仕込まれたエッジが男の腕を打ち払う。
手応えの浅薄さに舌打ちをする。
筋肉に邪魔され、十分な威力が伝わらない。
回避と同時に腕の腱を断つ事を期待したのだが。
しかし、刺突をかわし、隙を作ることはできた。
――そして。
(初手で斃す……!)
振り上げた足を勢いよく地に着ける。
踏み込みを聞かせ、刃を振る。
頚動脈を切り取り、一撃で絶命させる。
しかし、男は後方に跳躍し刃をかわす。
その巨躯に似合わず、素早い。
――殺せなかった。
再び距離を詰める。
男は半身になり、構える。
――ならば。
近づけば、迎え撃たれる。
それでも足を緩めず、懐に飛び込む。
一撃を掻い潜る。
そして奴の命を絶つ。
――殺すまで攻め続ける。
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