不慮の出来事・2

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 「――これ、朝、女子から渡すよう頼まれた」  昼休み、屋上にて。  お前、無表情だったな。しかも後ろの席のヤツに印刷物(プリント)を渡す時のように、素っ気ない仕草でさ。 「……“えっ!?マジ!?ホント!?”」  だから俺は、さも喜んでいるかのような表情をしてみせた。 「……」  なのにお前は黙って、ただ弁当を食べ続けるだけ。  なぁ、何か言ってくれよ。  少しでも……反応してくれよ。 「“一樹クンへ。伝えたいことがあるので、今日の放課後4時に、屋上で待ってます”……だってよ!?手紙って今時めずらしい感じもするけど……や、やっぱりこれってさ!?」  一瞬だけ、お前は俺を見た。けどすぐ元の方向に戻って、箸を動かしながらようやく言ったのは、まるで無関心といった口調の、あまりに短い言葉。 「……そうなんだろ」 「“やっぱり!?”」  なぁ……なんでそんなに無愛想なんだよ。せめてさ、嬉しくはないけど“良かったな。ようやく彼女ができて”とか言って、笑ってくれよ。  なぁ、本当は俺、泣きたいんだぜ。
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