写真

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俺たちは今、二人で旅行をしている。目的がある訳じゃない。ただ二人で未だ見たことのない景色を見たかったからだ。1時間半程バイクで走ると左手に海、右手に草原の綺麗な街道に出た。 「なぁ、ここで写真撮ろうぜ!二人で旅行した記念にさ☆」 俺はバックからインスタントカメラを取出した。 ギィー…ギィー… ぜんまいを回し結衣の方を向いた。 「わたし…写真は撮りたくないな、、、」 結衣の言葉に敏感に反応する俺。『どうして?』と理由を聞いてみる。結衣はうつむいてなかなか口を開かない。 パシャッ 結衣が小さく身を震わせ俺の方を見た。 「なんで撮ったの!?」 怒ってはいないが迫ってくる。俺は誤魔化そうと笑ってみせた。 「えぇ、写真くらい記念にいいじゃん☆」 同意を求める。してくれると思ったから… 「わ、私。写真は嫌だなぁ…だってなんか写真を見ると安心しちゃうでしょ?会えなくても落ち着いちゃうでしょ!?だから写真じゃなくて本物の私を見て安心欲しいな!」 結衣に出会ってからいくつもの発見があった。 とても繊細でそれでいて勢いのある今までに出会ったコトのないタイプだったから。 それにここまでハッキリと言われてしまってはもぅ、何も言えない。 俺はバックの中にインスタントカメラをしまい草原に腰を下ろした。 手を前へ伸ばし結衣を誘った。 「少し疲れたし休憩しようぜ?」 「うん!」 結衣は子供のように無邪気な笑顔をして走ってくる。 二人して横になり青い空を見ていた。 不思議と落ち着き、まるで時間が止まったかのような感覚。 「なぁ、結衣。さっきはごめんな、、無理矢理写真撮っちまってさ…」 反応がない。 不信に思い横にいるはずの結衣を見た。 『‥‥‥』 返事がないはずだ。気持ち良さそうに寝ている。 この顔を見るとどうも調子が狂う。 この下らない世の中でさえ良く見えてくる。 ウザい人ゴミさえも温かく思える。 初めて感じる感覚。 結衣のこの無防備さがとても心地良い。 俺まで安心してきてしまう。 ☆★☆一時間後☆★☆
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