プロローグ

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 ──陽射しが眩しい。  色鮮やかな花を咲かせた植物達は、水をまくと、その雫を振り払うかのように葉を揺らす。新しい土の匂いは、今日も朝がやってきたのだと知らせる。  ふとそこに、心地よい風が吹いた。  太陽の恵みを肌で感じることのできるこの小さな空間は、“少女”の数ある宝物の中で最もお気に入りとされている場所だ。蒼い空、澄んだ空気、木漏れ日、鳥のさえずり。この場所には少女の好きなものがすべて揃っている。  水をまき終えた少女は大きく伸びをした。  辺りに、甘い香りが漂う。  その香りに気付いたのか、少女は花壇の片隅に視線を移す。その存在を確かめると、ふわりと優しく微笑んだ。
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