プロローグ

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「あの花……まだ咲いているのか?」  男の視線を追うように、少女は再度花壇の片隅に咲く一輪の花──甘い香りの正体である──を見た。優しい微笑みを浮かべて。 「うん、そうみたい。長いよね」  のほほんとした返答に男はまた少し呆れる。まったく、彼女はしっかりしているのか抜けまくっているのかどちらなのだろう。  そんな父親の心境など知るはずもない少女は、悪戯を仕掛ける前の子供のような表情で無邪気に笑うだけだった。
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