プロローグ

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 それは、自然に囲まれて育った者ですら目を疑う程美しく。  誰もが新種だと騒いだ。何しろ毎朝花の世話を欠かさない少女ですら見たことのない花だったのだ。  だが少女は今、頭ではなく心で、別の何かを感じている。 「……私ね」  真剣な表情の中にも、彼女は純粋さを忘れず。 「最近この花を見てると、“懐かしいな”って思うんだ。なんでかは分からないけど」  誰に言うでもなく呟いた彼女の瞳は、ただの綺麗な花ではなく、その奥底に眠るぬくもりを見つけたかのようだった。
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