出逢い

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 ──世界は、荒れていた。  どこまで行ったってあるのは渇ききった砂だけで、“街”なんてのは本当に名称でしかないなと思い知らされた。視線を上に向けると白灰色の厚い雲が無限に広がっている。ああ、道理で昼間にも関わらず薄暗いのか。  かつて捨てられた言葉の中に『殺風景』というものがあるけれど、まさにこの状況のことを言うのだと思う。使われなくなったのも納得だ。どこを見たって雲か砂しかないのだから、殺風景かそうじゃないかの区別なんてどこでつけられるというのだろう。  溜め息をひとつ漏らすと同時に吹いた生暖かい風が、砂を舞わせた。  この街の人間は、太陽の存在を忘れてしまったのだろうか。  太陽がなくて困る者を今まで見たことがない。光を欲する生物はとっくの昔に消滅してしまった。改めて思うと、なんて冷たい世の中なんだろう。  嘲笑に似た笑いをこぼした後、僕は、ちっともおいしくない空気で深呼吸をした。
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