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この世界に思い残すことなんてない。
すべては捨てるものだらけ、ゴミ同然。思いやりも優しさもへったくれもない。こんな腐りきった世の中を、誰が大事に思っているのだろう。
まるで人間という人間が、“心”をどこかに置いてきてしまったようで。
……また余計なことを考えたな。
思ったことを言語にしないと気が済まないのは僕の癖だ。思考回路が他の奴より複雑で細かいのかどうかなんて知らないけど、こんなの面倒でたまらない。もっと簡単で単純で良かったのに。文句なんか言ったって今更どうにかなる訳ではないけど。
でも、それももうすぐ終わる。
大丈夫、僕は失敗はしない。
僕はただ、僕に与えられた『仕事』をこなせばいい。
辺りを見渡すと、先程より少しだけ暗くなっていた。多分そろそろ“夕方”なのだろう。空気は相も変わらず、ぬるいままだけれど。
時間も、季節すらも感じられない風を身体に受け、僕は歩き出した。
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