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  「――…律くん、こちらの方はお知り合い?」 「え…?」  知り合いも何も、顔が見えないんじゃあ確かめようがない。しかし、身内や知り合いが同じ高校に通っているというのを聞いたことがない律は当然その人物を知らない。看護士の疑問に対する返答をしようと口を開いた瞬間、その人物が突然走り出した。 「…ちょっとあなた!」  看護士が止めるのにも聞かず、その人物はあっという間に見えなくなってしまった。 「一体何だったのかしら…、急にお母さんに会わせてくれ、って言って来たのよ」  溜め息をつきながら律に話し始める看護士は、先程の人物が余程迷惑だったのかとても嫌そうな顔をした。  その人物に見覚えはなかった筈なのに、律は気になってしょうがなかった。ナースセンターへと戻って行く看護士の後ろ姿と先の人物の走り去った後ろ姿が、似てもいないのに重なった。
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