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「そうか………ここ何十年は平穏じゃったから、お前は知らないのか………。 その童は昔、神隠しによってさらわれた子どもじゃろう。 神隠しにさらわれた子どもは皆、異界と同化して妖怪と同類の存在となるんじゃ。 ………じゃが、異界はとても寂しい場所らしい。時折そうやって人間界に現れては同じ年頃の子どもを異界へと引きずり込んでしまうのじゃ。 …………もしかすると、近々神隠しが起こるかもしれん……………いや、既に起こった後かもしれんの……………。 お主は息子がいたじゃろう?用心せぇ。異界に引き込まれれば、二度と人間の姿では帰って来ぬぞ」 村長の話に驚愕した村人は、直ぐに村長の家を出ると、夜道を転がるように走った。 無事でいてくれ………… 村人は激しく呼吸しながら必死に走り、自宅の戸を思い切り開けた。 だが、時既に遅し。 村人の一人息子『ケイタ』は、家に帰っていなかった。 村人の目に映ったのは、髪がボサボサに乱れたまま、生気無く玄関に座り込んでいた妻の姿だった。
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