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魅せろ。
割れろ。
裂けろ。
咲け。
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屋上で。
一組の男女がいた。
少女は、誰がどう見ても童顔である。さして、彼女は気にはしていないようだが。紺色の膝上のスカートと、ワイシャツの上に灰色のカーディガンを羽織っていた。ピンク色のニーソックスが彼女のセンスを表しているように思える。
男は長い黒髪を二本に分け、三編みにしていた。かなりの長身で、綺麗に、白スーツを着こなしている。
ここが高等学園の屋上だということは、少女の方は学生。男は教師なのだろう。
禁断の愛――そんなことではない。
残念ながら、もう一つ、呼吸をしていた。
常軌を逸した生物が、一匹。
熊というか、犬というか、合成獣のような姿。茶色い毛、鋭い爪、黒く光る牙、見開かれた瞳。ゆうにワゴン車の五倍はあるのではないだろうかという大きさで、仁王立ちしている。
「退いてよっ! アタシがそいつ倒すの!」
「これしき、貴方が無駄な力を使う必要はありませんよ。それより、倒すなどと幼稚な言葉を使うのは辞めてください――殺すんです」
男は、そう少女にきつく言うと、両手を、さっと広げた。
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