真実の歴史

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   人差し指をチョイと自分の方へ曲げると、 用紙は床から風を受けたように舞い上がり、静かに男の手へと収まった。  何事もなかったかのように羽ペンを動かす男の目の前に、 良い香りを漂わせたカップが置かれた。 「あ、ミルクもちょーだい。」 言われた通りミルクを差し出しながら、 サンは小さく溜息をついて訊ねた。 「マスター妖精のお力を、そのような事に使って宜しいのですか?」 「ん?駄目だよ。 私利私欲に使おうとすると力は発動しないらしいんだ。」 「らしいって・・・・。でしたら普段、 総官長様はどのようにして発動させれているのですか?」 「コツがあるんだ。 『この書類がないと困る人達がいる』って考えながら発動させればいいのさ。 僕はいらないけどね、こんなの。」 書類を掲げてにっこり笑う男を見て、 サンは呆れた顔で首を横に振った。  ちょっとふざけたこの男、名はリック・ヴォーシン。 少し(?)悪戯っぽい性格だがこれも御愛嬌。 これでもマスター妖精の一員である。 そして、 会話に出たように大天使総官長という、天上界ではかなり地位が高い者のようだ。
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