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気持ちはいつもひとつ。
そうやっていつも生きてきた。
それなのに、一人の気持ちは僕たち家族ではなく、別の人に気持ちが行っていた。完璧なる裏切り行為。
母と妹そして僕。を、裏切った最悪の父親という存在の男。
絶対に許さない相手。
父親を尊敬していた部分はありますかときかれれば僕の答えは「もちろん、ない」と答える。幼き頃にはあったかもしれないその部分を僕は自身で消した。
父親と母親が離婚したのは僕が小学生の時だった。
けっして、母親に牙をむけない父親が牙をむけていたのだから……。だから、勝手にその先を想像した。この男と僕らはこの日を栄えにさよならだと。
僕が父親を見たのはそれで最後。
これは僕が死ぬまでの秘密だ。
次の日、母が僕と妹にいつもの笑顔を見せながら言った。
「お父さんは、急な出張で外国に行ったから暫くは帰らないの」
嘘だ。
僕は心で叫んだ。
妹は、
「おとうさん、たいへんだね~」
と、のんきに言っている。
そして、妹は今でもアイツが出張しているのだと思っている。
事実を教えることも出来ない弱い僕は、今年高校受験のためにまたあの塾へ行くことになった。
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