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「ただいまー」
「お帰りー」
玄関から返ってくるこの声の主は親ではなく、隣の家に住む幼なじみ……日向 紫音だ。
「お前勝手に俺ん家に入ってくんなよ」
「いいじゃん。私と翔の仲なんだしさ」
紫音は小学校、中学校こそ一緒だったが、今は有名な女子高に行っている。だから会うのは何だかんだで久しぶりだった。
「ただの友達だろ?」
「そう!ただの友達!友達で幼なじみ!!なのに翔ったら、ちっとも連絡くれないんだもん……」
そういうと紫音は悲しげに目を伏せた。ちょっと見ない間にすっかり女っぽくなってて、ちょっとドキッとしたのは紫音には内緒だ。
「でも翔……元気そうで良かったよ!」
「紫音も相変わらず元気そうで何より!」
「そう見える……?」
紫音は少し悲しそうに笑った。その仕種が、いつもの元気一杯な紫音とは少し違うような感じを漂わせた。
しかし、紫音はすぐにいつもの笑顔を取り戻した。
「なんてね!!元気元気!!連絡くれないケチな翔にいたずらしただけだから!!」
ホントにそうなのか?
何か嫌な予感がする……。
「ならいいけど……」
その後も紫音は俺の家の冷蔵庫を散々に荒らしてから帰っていった。
お前何か俺に用があって来たんじゃないのかよ?
俺は半ば呆れながら楽しそうに手を振る紫音を見送った。
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