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澄は携帯を閉じ、奏の言葉に耳を貸した。彼女が語る“将来の為”とはこんな事だった。
「いつか奥さんになって、いざ活用すると…」
奏の言葉を遮り、澄は言った。
「私の事より先輩自身が結婚出来るかどうか心配したらどうです?」
「ほっとけ。」
思わぬ反撃が効いたのか、苦い表情で言葉を返す奏に澄は、あざける素振りを見せた。
やがて二人が乗っている車は、
青山にある三階建てのフォトスタジオ兼事務所に到着し、その一階にある事務所へと入っていった。
「皆さん、お早うございます。」
「はざーす。」
同僚たちに朝の挨拶を交わした後
二人は各自のデスクについた。
奏は、仕事先の南青山にあるフォトスタジオに向かう為の準備に取り掛かり、澄は今日のスケジュールのチェックをしていた。
「奏さん、今日の撮影なんですけどモデルさんスタジオ入りが十時になってます。」
「あいよ、分かった。」
カメラマンとして様々な場所で
活躍をしている奏と比べ、新人アシストである澄は、事務所作業をすることが日常となっている。
デジタル画像の加工、フィルムやデータの処理などをするのが彼女の役目だ。
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