記憶

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母親は娘が浜辺から離れていることに気付き声を掛けた。 「危ないから早く上がりなさい。」 声に気付いた少女は 元の場所へ戻ろうとした、 その時――。 風の動きが変わったのか 穏やかな波は、少女を軽く襲いかかった。 波風を受けた少女は驚いたのか、一瞬身体が固まってしまうが、 直ぐさまはっと我に返り 再び足を動かした。 しかし「友達」は遊び足りないのかのよう、今度は大波で強引に 少女を引き止めようとする。 怖く感じたのか、急いで母親の元へ戻ろうとするが、足がもつれてしまう。 少女にとって優しかった波は、 自然の力によって怪物へと変わり始める。 急いでこの場から離れようとした 次の瞬間――。 高波が一気に彼女を襲いこむ。 さっきまで仲良く遊んでいた 「友達」に、突然裏切られた出来事だった。 これが、彼女の十数年前の記憶。
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