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早朝、ロザリカが迎えにきた。
「思った以上に軽装ね」
「二日分の食料しか入ってないからな」
いつもの黒づくめの格好に、背中と腰に刀を差している。持っている物といえば、小さなリュックのみだ。
「テントとかは?間に村なんて無いわよ」
「必要ない、余計な荷物は邪魔だし動きも鈍る」
アニー達は当然といった顔をしている。
「で、護衛するのは君だけか?」
「え、えぇ…よろしくお願いするわ。じゃあ、行きましょうか」
さぁ、仕事開始だ。早朝の街を遺跡に向かい、歩きだす。
道中、何もなければいいが…。
出発して半日経過した。俺を先頭に、ブラム、ロザリカと続き、殿にアニーという陣形を組み、草原を歩いていた。
「ね、ねぇ…少しは、休まない?」
ロザリカが休憩を提案する。
「いや、休憩にはまだ早い。今日中に進めるだけ進んでおきたい、我慢してくれ」
「そ、そんなに、急がなくても、遺跡、は、逃げないわよ」
「別に急いでないよ、むしろ君に合わせてるつもりだが?」
呆れた表情をし、立ち尽くすロザリカ。変なこと言ったか?
「私に、合わせて、るなら、休憩、してよ」
座り込むロザリカを見つつ、タメ息を吐く。
「やれやれ…仕方ないな。休憩にしよう」
俺は彼女の隣に腰を下ろす。
「あ、あなた達、どういう体してるの?半日、しかも休み無しで、歩き続けるなんて」
「別にこれくらい普通だろ?君もついてこれてる、問題無いよ」
「じ、冗談言わないでよ!全滅した調査隊だって、ここまでハイペースじゃないわ!大体…」
視界の端で何かが動いた。刹那、その方向から槍が飛んできた!
「危ない!」
ロザリカを庇いつつ背中の刀を抜刀し、槍を叩き斬る。
「隠れてないで出てこいよ」
太い木の陰からオークが出てくる。数は二匹。
「仲間ノ敵、見ツケタ、ゾ」
片言の人語を喋りながら俺を睨み付けてくる。恐らくはこの前の、オークの残党だろう。敵討ちとは、迷惑な話だ。
「敵討ちなんてやめな。それに悪いのはお前達の方だ、人間襲ってたんだからな」
「オ、俺達悪クナイ。ニンゲン狩ルノ、俺達ノ楽シミ」
自分達の楽しみで殺されては、たまったもんじゃない。
「言いたいことは分かった。だが、人間には人間の言い分ってのがある。」
俺は腰の刀も抜き、戦闘態勢に入る。
「で、俺は人間で、人間の味方だ。悪いが死んでくれ」
俺の言葉を合図にオーク達が雄叫びをあげて突進してきた。
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