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「ツイてないな」
通りを歩きながら、ぼやいてしまう。
ここはビリディース領。ローフィル・ビリディース公爵の治める、比較的治安の良い所だ。この世界は、ほとんどが領という形をとっている。領地内には多数の村があり、そこは農業などで成り立っている。領下町にはギルドと呼ばれる組織があり、細かく役割別に別れている。
俺はこのビリディース領でアニー、ブラムを相棒にして何でも屋を営んでいる。経営はあまり良くない。理由は色々あるが、一番の理由はギルドに所属していない事だ。
先ほどから手当たり次第にギルドを回り仕事を探したが、正式にギルドに所属していない者に当然ながら仕事はない。俺やアニー、ブラムも同様なのだが、ある事情で俺達には特別に仕事を斡旋してくれる…はずが、運悪く人数に空きがなかったり、仕事自体がなかったりと散々な状況だった。
「…どうすっかねぇ」
思わず天を仰ぐ。昨日の仕事の報酬が出るとはいえ、オーク退治などギルドでは初級の仕事。多少報酬を上乗せして請求しても、高がしれている。
「あの…」
不意に背後から声をかけられた。
「?」
見ると一人の女性が立っている。歳は二十代半ば、腰まで伸びた赤毛を後ろでまとめている。長い睫毛が目を引く。うん、美人だ。知らない顔だが。
「あの、ガルシアさんですよね?」
「そうだけど、君は? 以前どこかで会ったっけ?」
赤毛の女性が首を横に振り否定する。
「いえ…申し遅れました、私はロザリカといいます。探索者ギルドで研究員をしている者です。実はガルシアさんに依頼を頼みたいのですが…」
ロザリカと名乗った女性が言いにくそう口ごもる。
「ここで立ち話もなんですし、俺の事務所に行きましょうか」
やれやれ、何とか仕事にありつけそうだ。
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