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「えぇ、分かりました。ナイトストーカーさんに頼んで本当に良かった」
ロザリカの言葉に俺達の動きが止まる。
「俺の名字はグランブルーですが」
「誤魔化さなくてもいいですよ。異端者、ナイトストーカーさん」
最初に感じた穏やかな感じが消え、代わりにあるのは妖しげな雰囲気。
「なぜ…その名を知っている?場合によっちゃ、生かして帰さねぇぞ」
出入口にいるアニーが銃を抜き、ブラムが窓から逃げられない様に身構える。
「あなただけじゃなく、そこの二人も異端者だってことも知ってるわ」
この状況で笑ってやがる。逃げ切る自信があるのか、俺達を倒す自信があるのか、ただのハッタリか…なんにせよ油断出来ない。
「俺達をどうするつもりだ?」
「さっき言った通りよ。護衛してほしいの」
異端者相手にただの護衛なわけがない。
「断ったら?」
「どうなるかは、分かってるんじゃない?」
「異端審問所にタレ込む、か」
異端者にとって異端審問所、及び異端審問官は天敵だ。互いに目の敵にしている感もある。しかも審問とは名ばかりで、即処罰されるのは目に見えている…何もしていなくても、だ。さらに、処刑されることもざらだ。
「行きたけゃ行けよ。俺達は一向構わないぜ」
「驚いた、怖くないの?」
「どうかな?来てみないと分からないな」
肩をすくめて皮肉げに笑う。
「あなた、他の異端者とは違うみたいね。普通なら嫌でもこっちの言うこと聞くのに」
「昔からよく言われるよ。…これで対等だぜ、どうする?」
「…わかった、タレ込むのは無し」
彼女の表情を見るかぎり嘘ではない様だ。妖しい雰囲気は消えていないが、穏やかな笑みを浮かべている。どうやらこっちが本当の彼女らしい。
張り詰めていた緊張が緩む。
「…」
空気を察したのか、アニーが銃を納め、ブラムが身構えを解く。
「で、目的なんだい?まさか本当に護衛だけって話か?」
「そうよ、さっきから言ってるじゃない。私の言葉に嘘はないわ」
「マジかよ…拍子抜けだな」
「そう言っていられるのも、恐らく今だけよ。遺跡にいる少女がなんであれ、人間じゃないことは確かなんだから」
ロザリカの言う通りだ。気を引き締めてかからないと、死んだ奴らの二の舞だ。
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