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春がやって来た。
今日は高校の入学式。校長先生の長々しい話もやっと終わって先生の指示で教室に移動していく。
教室に入ってから20分程の暇ができた。
最初は緊張感のあった教室に段々とざわめきが聞こえてくる。
「あの~」
隣から声が聞こえてきた。
「私、小林 福音(こばやし ふくね)っていいます。えっと宜しくお願いします。」
最初はポカンとしていた私だがスグに気が付いた。これはお決まりの挨拶で彼女は友達になりたいんだと。
「あっ私は水那 ヘイラ(みずな へいら)。宜しくね。」
そして「中学どこ?」とか「部活入るの?」とか話てるうちに教室のドアが開いた。
ヒョロッと伸びた背丈、ボサボサの髪、眠そうな目、年齢は20代後半だろう。
「あ~俺は大熊 英雄(おおくま ひでお)まぁ一年間宜しくな」
ダルそうな挨拶だった。どうやらこの先生が担任らしい。正直嫌だった。
入学式から1週間。学校にもなかなか慣れてきた。放課後、福音と帰る途中、ふと気が付いた。
「あっ…ゴメ~ン。事務室に用事があるんだった。」
「そっか。じゃあ待ってるね。」
福音は優しかった。知り会ったばかりだったが、親友くらいに思えていた。
事務室に用事を済ませて足早に福音の元に向かった。
「ドンッ!!」
身体に衝撃が走った。
「いったぁ~」
「いって…」
どうやら相手も倒れている。うちの制服をきていたのでうちの生徒だろう。さらさらの黒髪、色白の肌、そしてなにか不思議な雰囲気があった。彼は立ち上がり歩き出した。
「あの…」
私は声をかけた。
彼は振り返った。さっき感じた雰囲気は彼の目を見て何だったのか分かった。それは容易に語れるものではなかった。
あえて表現するなら深い悲しみ。とてもとても深い…
「なに?」
これが彼、悲しい天才との出逢いだった。
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