序章

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「お前は、もっと学ぶべきだ。いろいろなことをな。状況を良く見なければ、技はお前に戻ってくるだろう」  少女は、さらに疑わしく思うように顔をしかめる。  その表情を見て、男はもう一度ため息をついた。  それも何を言っても伝わらないと感じたのであろうか、肩を落としている。 「この件に関して、目撃者はいない。しかし、お前があの場で起こした事は誰もが知っている。どこから洩れたのかは、わからぬがな」  男は、少女に背を向けた。しかも肩を落としたまま、淋しげな様子で。 「証拠はない。けれど相手は貴族だ。だからお前に罪が及ぶ可能性は捨てきれないのだ。……お前は、この国を出た方が良かろう」 「父様?」  少女は驚き、信じられないといった様子で立ち上がった。  そして男の姿を、救いを求めるように見つめる。 「もう手配はしてある。荷物をまとめておきなさい。明日には、迎えがくる」 「父様?」  少女は、男の袖を縋るようにひっぱった。  そして男の顔を見ようと、その身を男の前へと移動させる。
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